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Whitebell

Column

2026.07.09特許調査

FTO調査とは——製造業が「他社特許を踏まない」ための基礎知識と進め方

新製品の設計が固まり、量産の準備に入る。そのとき、ふと不安がよぎります。「この構造、どこかの会社が特許を持っていないだろうか」——この不安に答えるのが、**FTO調査(Freedom to Operate調査)**です。

FTO調査とは何か

FTO調査とは、自社の製品・技術が、他社の有効な特許権を侵害せずに実施(製造・販売)できるかを確認する調査です。日本語では「侵害予防調査」「実施自由度調査」とも呼ばれます。

混同されやすい調査と並べると、位置づけがはっきりします。

調査の種類 問い 主なタイミング
出願前調査(先行技術調査) この発明は新しいか? 特許を出願する前
FTO調査 この製品は他社特許を踏んでいないか? 製品開発の節目・量産前
無効資料調査 相手の特許を無効にできる資料はあるか? 警告を受けたとき・係争時
FTO調査・出願前調査・無効資料調査の違いを製品ライフサイクル上で示した図

つまりFTO調査は「攻め」ではなく「守り」の調査です。自社が特許を持っているかどうかとは関係なく、モノを作って売るすべての会社に関係します

放置するとどうなるか

他社特許の侵害発覚が設計段階・量産準備・量産後と遅れるほど対応コストが増える概念図

他社特許の侵害が量産後に発覚した場合、起こりうることは次の通りです。

  • 製造・販売の差止め(作ったものが売れなくなる)
  • 損害賠償(過去の販売分に遡って請求されうる)
  • 設計のやり直し(量産後の設計変更は、開発段階の何倍ものコストになる)

重要なのは、「知らなかった」は通用しないということです。特許権の侵害は、相手の特許を知らなくても成立します。だからこそ、疑わしい段階で調べておくことに意味があります。

FTO調査の進め方(4ステップ)

  1. 対象を特定する——製品のどの部分・どの技術を調べるかを絞る(全部を一度に調べようとしない)
  2. 特許を探す——対象技術に関連する有効な特許を、日本および販売予定国で検索する
  3. 突き合わせる——見つかった特許の請求項(権利範囲を定めた文章)と、自社製品の構成を比較する
  4. 対応を決める——リスクが高い場合は、設計変更・ライセンス交渉・弁理士への鑑定依頼などを検討する

実務でつまずくのは2と3です。検索式の設計はサーチャーの専門技能で、請求項の読み解きには知財の素養が要ります。だから従来は、専門の調査会社や特許事務所に依頼するのが一般的で、1テーマあたり数十万円規模の費用になることも珍しくありませんでした。

「毎回は頼めない」が現実的な悩み

FTO調査の悩ましさは、調べたい場面の数に対して、予算が追いつかないことです。設計変更のたび、新製品のたび、調査会社に依頼していては費用がかさむ。かといって調べずに進めるのは怖い。

現実的な落とし所は、濃淡を付けることです。

  • 日常の設計判断レベル→一次確認(候補特許の有無をざっと把握する)
  • 量産前・重要案件→本格調査(専門家による調査と評価)
  • 警告状が来た・係争の懸念→弁理士へ(法的判断は弁理士の領分)
特許調査の濃淡設計:日常の一次確認・量産前の本格調査・弁理士鑑定の3層ピラミッド

近年は、この「一次確認」の部分をAIで支援する選択肢も出てきています。私たちWhitebellが総代理店を務める特許調査AI「PatVisor」は、検索式を作らなくても、技術内容の文章や公報番号を入力するだけでリスク候補の特許を抽出し、根拠付きで提示します。日常レベルの確認を低コストで回し、必要なときだけ深掘りする——という濃淡設計が現実的になってきました。

最後に:FTO調査は「法的なお墨付き」ではない

ひとつだけ、正直に書いておきます。FTO調査は侵害リスクを下げるための調査であって、「絶対に侵害していない」という保証を与えるものではありません。最終的な法的判断(鑑定)は弁理士の業務です。調査で候補を絞り、重要な論点だけを専門家に判断してもらう——この役割分担が、費用と安心のバランスがいちばん良い進め方です。

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