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2026.09.17原価管理
労務費の単価(賃率)はどう決めるか——「1時間いくら」に根拠を持つ
案件別原価計算の労務費は、工数 × 単価で計算します。工数の記録については別の記事で書きました。今回はもう片方、**単価(賃率=1時間あたり・1日あたりいくらで計算するか)**の決め方です。
ここで手が止まる会社は多く、「正確な賃率が決められないから原価計算が始められない」という相談も受けます。先に結論を言うと、最初は会社平均の1本でいい。精緻さより、全案件に同じ物差しが当たっていることが大事です。
基本の式:給与総額から逆算する
賃率の考え方はシンプルです。人にかかっている年間の費用を、働ける時間で割る。
賃率 = 年間の労務費用総額 ÷ 年間の総実働時間
分子と分母に何を入れるかだけ、押さえてください。
分子(労務費用総額)に入れるもの
- 給与・賞与(現場の製造要員分)
- 法定福利費(社会保険・労働保険の会社負担分。給与の15%前後になり、無視すると単価が大きく狂います)
- 通勤手当などの手当類
分母(総実働時間)の注意
- 所定労働時間ではなく、実際に働ける時間(年間休日・有給消化を引いた現実の時間)で割る
- 残業が恒常的なら、その分は分子(残業代)と分母(残業時間)の両方に乗せる
例:現場5人の給与・賞与・法定福利費の合計が年2,500万円、5人の年間実働が合計9,000時間なら、賃率は約2,780円/時。日額なら8時間で約22,000円です。
「会社平均1本」から始めてよい理由
ベテランと新人で単価を分けるべきか、とよく聞かれます。分けたほうが精緻ですが、最初はおすすめしません。
- 単価を人ごとに分けると、工数の記録も人ごとに正確である必要が生じ、記録のハードルが上がる
- 「誰がやったか」で案件の損益が動くと、数字が人の評価の話にすり替わるリスクがある
- 値決めと受注判断に使う限り、会社平均でも判断の向きはほぼ変わらない
平均1本で回して、「熟練工が張り付く特殊案件だけ実態とずれる」と分かってから、その案件種別だけ単価を分ける——この順序が現実的です。
間接時間をどうするか
現場の時間には、どの案件にもひも付かない時間——朝礼、清掃、機械のメンテ、手待ち——が必ずあります。扱いは2通りです。
- 分母から除いて、賃率に織り込む——年間実働のうち案件に使える時間だけで割る。賃率は上がるが、記録は案件分だけでよい(簡便でおすすめ)
- 「間接」という箱に記録する——実態は正確になるが、記録の手間が増える
どちらでも構いませんが、「間接時間の存在を無視して所定時間で割る」のだけは避けてください。単価が安く出て、全案件の利益が実態より良く見えます。
年に1回、見直す
賃率は決めたら終わりではありません。昇給・採用・残業の増減で実態は動きます。年度初めに1回、前年の実績で計算し直す——この程度の頻度で十分です。月ごとに変えるのは、手間のわりに判断への効果がありません。
道具に載せると、ここが自動になる
Excelで運用する場合は、案件別原価計算テンプレートに日額単価を入れる欄を用意してあります。私たちが開発した原価管理システム「Cosmil」では、単価をマスタに登録しておけば、現場が入れた工数から労務費への換算も、その先の製造経費の配賦も自動で回ります。単価を年1回見直したときも、設定を変えるだけです。
賃率は「正解を当てる」ものではなく、根拠を説明できる決め方を選ぶものです。給与総額と実働時間——どちらも社内にある数字から、今日決められます。
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